浸透力を高める機能性展着剤
界面活性剤の分類の項で説明した、展着剤に使われる界面活性剤のうち、「非イオン系エステル型」に分類されるものは、高濃度で使用しても植物が拒絶反応(薬害)を起こしません。
界面活性剤はある一定以上の高濃度で使うと大きく性質を変えることができます。
下の写真は農薬の乳剤を溶かして白濁した薬液に、機能性展着剤「アプローチBI」を入れたときの様子です。
「アプローチBI」を入れたことによって、白濁した薬液が透明になりました。何が起きたのでしょう。
「可溶化」現象
ビンの中で起こっていることを模式的に表したのが、以下のイラストです。
水に溶かした農薬の粒子が大きいと、かたまりとなった農薬粒子に光が反射し、白濁して見えます。そこにアプローチBIを一定濃度以上入れると、このかたまりをバラバラにしていき、目に見えないほどの小さな粒子になります。この現象を「可溶化」と言います。
「可溶化」によって農薬の粒子が細かくなると、どのようなことがおきるのでしょうか。
「可溶化」による浸透促進
植物の表面は「クチクラ膜」と呼ばれる、ワックスを主成分とした層で覆われています。このクチクラ膜には表面に数ミクロン程度の亀裂があります。
「可溶化」によって細かくなった農薬粒子は、この亀裂を容易に通過するため、植物体内に農薬がスムーズに浸透していきます。
植物体内に浸透してから効果を発揮する農薬が数多くありますが、たとえば農薬散布後に降雨などがあった場合、十分に薬剤が浸透する前に雨で洗い流されてしまうと、効果が下がってしまいます。植物体内に薬剤を速やかに浸透させることにより、降雨による効果の減退を防ぐことができます。
浸透が促進されると効果的な場面
農薬の中には、植物の中に入ってからはたらく仕組みのものがあります。一定の量が速やかに植物に吸収されることによって、安定した効果を発揮するのですが、展着剤によってその作用を補助することにより、薬剤の効果を安定させます。
たとえば、農薬を散布してから十分な時間が経たないうちに雨が降ってきてしまうと、有効成分が吸収される前に洗い流されてしまい、効果が減退してしまうおそれがあります。
以下の事例のように、薬剤処理後短時間の降雨であっても、薬効を安定させる効果が見られています。
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