農薬で使われる界面活性剤
界面活性剤は農薬に係るさまざまな用途で利用されています。農薬を作る際に製剤の中へ入れ、もともと水に溶けないような農薬の有効成分を水へ溶けるようにしたり、水へ希釈した際にタンクの中で分散されるようにしたり、経時変化を防止するといった働きをします。
界面活性剤の中で、散布する薬液の付着性の改善など物理性を改善するために後から加えるものが展着剤です。
希釈した液体に後から加えるため、成分や投下量などをより柔軟に設計することができます。
界面活性剤の分類
水に溶けたときに電離してイオンになる、またはイオンにならないなどの性質により界面活性剤は以下のように大きく4つに分類されます。
界面活性剤の分類から見た展着剤
有効成分から見ると展着剤は以下の図のように分類されます。特にねらった性質を持たせるために調整のしやすい「非イオン性界面活性剤」を使用した品目には、機能性展着剤と呼ばれる製品が多く含まれています。
機能性展着剤とは
展着剤には比較的安価で低濃度で使用するものと、比較的高価で高濃度で使用するものがあります。
展着剤と呼ばれる製品が共通して持っている性質は「ぬれ」と「付着」です。つまり散布した薬液が植物の表面ではじかれないよう付着しやすくさせる性質と、付着した後に植物の表面でぬれ広がる性質です。
それら展着剤として一般的に持っている性質に加えて、なにか特徴的な機能を付加した展着剤を「機能性展着剤」と呼んでいます。
機能性展着剤は、目的に応じてその機能を発揮し、積極的に農薬の効果を引き出します。
機能性展着剤の目的
農薬を実際に圃場で使用すると、薬剤の効果を妨げる要因が出てきます。また、散布する薬剤の性質によって「どこに届いてほしいのか」という要求も違います。
機能性展着剤はこれら要因や要求に対し、目的に沿った形で散布薬液の物理的な性質を改善して、薬剤の効果を引き出します。
機能性展着剤を使いこなすには、それぞれの展着剤の特徴や薬剤の性質、作物の状態などを考えあわせて選んでいくのが効果的です。
なぜわざわざ別に入れるの?
機能性展着剤と呼ばれる製品は、それぞれ目的とする性質を持たせるために、一般的な展着剤とは違い高濃度で使用します。
農薬の製剤の中には有効成分の他にさまざまな助剤を入れなければなりません。もちろんコストも抑えなければならないため、あまり多くの界面活性剤は入れられません。そこで展着剤に機能を求める場合には、目的に合わせて製剤に入っているよりも多くの界面活性剤(展着剤)を加える必要があります。
次回からはさまざまな機能性展着剤の性質やその効果について解説していきます。
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