“競り”合うように生育している姿が名前の由来と言われる『セリ』。数年前にテレビ番組で紹介されてからは仙台近郊の居酒屋では「セリ鍋」が評判で、根まで美味しいと冬場の人気メニューとして喜ばれています。
宮城県は全国1位の出荷量(467t/2014年産)を誇るセリの産地。今回訪れた石巻市(旧河北町)は山からの伏流水や地下水が豊富で、セリ栽培に適した場所。何と300年前の江戸時代から栽培が続いていると言われており、現在は『河北セリ』の名で出荷されています。
JAいしのまきの亀山氏に伺うと「JAのセリ部会は現在14名で栽培面積は4ha、2016年の出荷実績は75tです。当地では収穫方法の違う2つの形があります。冬に出荷する『根ゼリ』は田に水を張って栽培するもので、泥から根ごと引き抜いて収穫し、根を付けたまま出荷します。対して春に出荷する『葉ゼリ』は、寒さに弱い品種なので冬期に一旦葉が枯れてしまいますが、春になって新たに伸びてくる茎葉部を刈り取り出荷します」とのこと。特に『葉ゼリ』は日持ちがあまりしないので、当地まで足を運ばないとなかなか味わえない逸品なのだそうです。
宮城県石巻農業改良普及センターの伊藤技術次長は病害虫について「病害は葉腐病や葉枯病が、虫害は茎葉に侵入して食害するモトグロヒラタマルハキバガが問題となっています。登録のある農薬が少ないので、JAいしのまきと現地検討会を開催するなど、被害が拡大しないよう、出荷最盛期に安全で安心な『河北セリ』を消費者の皆様にお届けできるよう細心の注意を払っています」と説明してくださいました。
最後においしい葉ゼリの食べ方をご紹介。サッと茹でて冷水で冷まし、水分を絞り適当な大きさに切って麺つゆにつけて一晩おくだけ。花見の季節、満開の桜の木の下で食べるこの「お浸し」の味は格別だとか。このためだけに再訪を願わずにはいられませんでした。