眩しいほどの鮮やかな黄色、重厚で存在感タップリの果実、『文旦』。南国土佐を象徴するこの果物は江戸時代初期に日本に渡来したと言われています。自然交雑により様々な品種を生み出しており、グレープフルーツもそのうちの1つなのだそうです。
国内生産量の約9割(※平成18年度産)が高知県産であることから、県を代表する農産物の1つと言えるでしょう。中でも土佐市は県内の5割以上の生産量を誇り、同市宮之内地区には「土佐文旦発祥之地」として石碑が建てられています。
高知県農業技術センター果樹試験場の田中チーフに栽培状況を伺うと、「例年3月下旬頃に発芽が始まり、5月上旬に開花します。開花中は他品種の花粉で人工授粉を行います。6月下旬~7月にかけては摘果、8月頃には台風対策などの管理、11月に入っての仕上げ摘果などを行った後、12月から収穫を行います。収穫後は『野囲い』といって園地にムシロなどを敷いた上に文旦を置き、藁などで覆い2ヶ月ほど追熟させてから出荷を行います」とのこと。現在の収穫量については「平成20年度の栽培面積は441ha、生産量は10,578tでした」と説明してくださいました。
主な病害虫については「病害では黒点病とかいよう病が主体です。虫害ではハナムグリやケシキスイなどの訪花害虫や、カイガラムシ類の被害があります。そのため、これらの病害虫については適時防除が必要です」。
これからの方向性については「あるOBからの受け売りですが、皮が厚く剥きにくいからこそ、お父さんが皮を、お母さんが袋を剥く。そうして子供たちが食べるという一家団欒でワイワイ言いながら食べてもらいたいですね」。『孤食』からの脱却に“一肌”ならぬ“一皮”脱ぎたいといったところでしょうか。「そのためにも全国的な知名度をもっと上げたいです」とのこと。食卓を明るくするのは、その鮮やかな果皮の色だけではなさそうです。