子孫繁栄につながる縁起物として、名古屋から関西方面ではひな祭りの時に食べる風習があるのが『わけぎ』。植え付けた種球が株分かれして、多い時には50球ほどにも増えるというのがその由来とされています。
広島県は『広島わけぎ』の名でブランド化され、国内生産量の6割以上を占める全国1位の産地です。なかでも圧倒的なシェアを誇るのが、文学や映画の舞台としても有名な尾道市。当地の状況についてJA尾道市 営農販売部の村上主任と、同 向島営農センターの渡辺センター長に話を伺いました。
「2014(平成26)年においては146名の生産者で栽培面積が43ha、出荷量は約500tと、国内生産量の約4割を当管内で生産しています。周年栽培していますが、夏場は生産しにくく、出荷量は少なくなります。10月から11月と2月末から4月頃が収穫のピークです」。
主な病害虫はとの問いには「害虫は夏場のアザミウマ類と、種球作りの際のアブラムシ類が問題です。病害に関しては春先に多く発生するベと病と長雨時の灰色かび病ですね。いずれも薬剤防除にて対応しますが、わけぎで使用できる薬剤が限られているのが難点です」と説明してくださいました。
皮むきや結束といった出荷にかかる労力が大きいらしく、JAでは『計量結束包装機』を近々導入し、生産者の負担を軽減していく予定とのこと。導入後は出荷での労力が減った分、生産者の方々にはより多くの植え付けを行ってもらいたいと願っているようです。
ここでも高齢化による後継者不足が問題のようですが、「生産者を増やす取り組みをJAと部会の両方で行っています。その一環として毎年『わけぎ塾』というのを開催し、就農に向けての門戸を広げています」とのこと。一晩経つと株が起き上がってくるほどという『広島わけぎ』同様、将来に向かって力強く立ち上がっていく様子が感じられます。