盛夏の頃より、その瑞々しさと滲み出る甘さで私達を楽しませてくれる季節の果物は?との問いに、『梨』と答える人は決して少なくはないでしょう。
弥生時代頃から食されていたとされ、江戸時代には栽培技術の発達で数多くの品種が育てられていたという『梨』ですが、平成24年の、全国収穫量(※日本なし)27万5,400tのうち、千葉県が約12%の3万4,400tで堂々の1位となっています。県内でも栽培が盛んな地域は多々ありますが、今回訪れた白井市ではおよそ100年程前の明治時代後半から栽培が始まり、現在では年間約6,500tの収穫量を誇る千葉県屈指の生産地になりました。
主な栽培品種は幸水、豊水、新高、あきづきといったもので、8月初頭より幸水の出荷が始まり豊水、あきづきと続き、10月上旬の新高の出荷が終わるまでは連日の収穫作業に休む暇も取れないほどだとか。
主な病害虫についてJA西印旛の山田氏に伺うと「病害は黒星病の発生が問題で、4月頃の防除が重要です。虫害についてはアブラムシ類、カメムシ類、シンクイムシ、ハダニ類で、こちらも適正防除で被害を食い止める努力をしています」とのこと。
樹齢も30年を超えると徐々に樹勢が落ち、実の付きも衰え始めるとのことで、改植や若木の育成を行っている方も多くいるそうです。しかし成木になって安定した収穫が望めるようになるまで早くて10年程度かかるらしく、そこには将来を見据えた農業経営に関する長期的なビジョンも必要のようです。
現在、『しろいの梨』で商標登録を取得し、ブランド化に励んでいるとのこと。そこには「地域名+作物名」で白井市が梨の産地であることを広めていきたい強い思いが込められているからだそうです。また白井市のキャラクター『なし坊』も普及に一役買っているそうで、官民一体となった普及への取り組みは、近い将来必ず実を結ぶに違いないでしょう。