旧約聖書にもその名を連ね、アダムとイブの時代から「知恵の木の実」と呼ばれている『いちじく』は、タンパク質分解酵素を含み、食後のデザートとしていただくと消化を促進してくれるという、なかなかの優れものです。
漢字では『無花果』と書きますが決して花をつけないというのではなく、実の中に花をつけるため外からは確認できないというもの。花の食感が独特の風味とも言えるでしょう。
愛知県は全国シェア1位を誇るいちじくの主産県。中でも西三河地域は約80haの作付面積を有する、いちじく栽培の盛んな地域です。昭和46年頃より稲作転換作物として取り組む農家が増加したのが産地の始まりで、現在は共同の予冷・保冷設備の充実などで安定供給体制が発達し、「日本一のいちじく産地」としての地位を不動のものにしています。
露地栽培の場合、一文字仕立てという整枝方法で10a当たり60~70株が定植され、8月上旬から11月上旬にかけて収穫します。現在の主要品種は栽培しやすく日持ちが良い「桝井ドーフィン」ですが、平成5年に品種登録された「サマーレッド」の作付面積も徐々に増えてきています。
病害虫に関してJAあいち経済連の長縄技術主管に話を伺うと「病害は株枯病が問題です。台風などで圃場が冠水すると、病原菌が大きく広まってしまうことがあります。虫害で問題なのはアザミウマ類ですが、最近はカミキリムシの被害も見過ごせません。その他、春先の急激な気温低下による凍害も大きな問題になるため、予防が大切です」とのこと。
「作付面積は減少傾向にありますし、生産者の高齢化も進んでいます。しかしいちじくは比較的販売単価も高く、女性でも栽培しやすい作物です。病害に強い抵抗性台木の研究も進んでいますし、今後はもっと多くの方にいちじく栽培に取り組んで欲しいと思っています」と、長縄技術主管は産地拡大のために日々足繁く現地に通っているとのことでした。