病原菌:Typhula ishikariensis,Typhula incarnata
ティフラ・イシカリエンシス、ティフラ・インカルナータ
- 発生部位葉鞘、葉身
- 発病適温5℃付近
- 発生動向
積雪量が多く、かつ、積雪下の地温が比較的高くて土壌凍結期間の短いところに発生しやすい。本病の発生には40日程度の根雪期間が必要である。ベントグリーンでの発生が問題となるが、寒地型芝草、暖地型芝草に発生する。
- 初発のでかたと被害
直径5~20㎝程度、円形または不定形のパッチ症状を呈する。パッチの色調は、内部が淡褐色~褐色で周縁部が濃褐色を呈する場合とパッチ全体が均一の淡褐色~褐色となる場合がある。
- 多発時の被害
多発するとパッチが拡大、融合して大型不定形を呈する。地上部が枯死して裸地化することもある。枯死芝は白色化し、その表面にケシ粒大の黒色または褐色の菌核が形成される。
菌核が多数形成されると、晩秋に菌核から子実体が発生する。黒色小粒菌核病菌は白色、褐色小粒病菌は桃色である。
- 診断のポイント
罹病葉上に形成される菌核で区別する。融雪後日数が経過すると菌核が罹病葉から落ちてしまい、確認が困難となる。罹病葉上にかすがい連結を有する菌糸が形成されることもあるので、顕微鏡で確認する。
- 丸和バイオケミカル(株)の取扱薬剤
セルカディスフロアブル、パッチバスター、丸和レキシコン
淡褐色のパッチ
褐色のパッチ
小型のパッチ
軽症のパッチ
軽症のパッチ内部には芝芽が残っている
パッチが多発し、大型、不定形を呈している
フェアウェイに多発したパッチ
ラフに多発したパッチ
パッチ上に菌糸が形成されている
根雪前に薬剤を散布すると防除できる
罹病葉上に形成された黒色小粒菌核
罹病葉上に形成された黒色小粒菌核
罹病葉上に形成された褐色小粒菌核
罹病葉上に形成された褐色小粒菌核
春に形成された菌核から晩秋に子実体が発芽する
褐色小粒菌核の子実体
文・写真:
丸和バイオケミカル株式会社 開発本部 顧問
農学博士田中明美(たなかあけみ)
1963年生まれ
1985年に香川大学農学部を卒業後、香川大学大学院農学研究科、愛媛大学大学院連合農学研究科に進み、1993年2月に博士(農学)取得。
1993年4月より、香川大学名誉教授 谷利一博士のもとで緑地科学研究会 主任研究員として芝草病害に関する研究・調査に従事する。谷博士の逝去後は(有)緑地科学研究会を設立し、2018年5月まで代表取締役として活動した。
2018年6月より丸和バイオケミカル(株)開発本部 技術顧問として、芝草病害に関する研究および芝草殺菌剤の開発に関わっている。