病原菌:コムラサキシメジ(Lepista subnuda)
シバフタケ(Marasmius oreades)
ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)
チビホコリタケ(Bovista dermoxantha)
ヒダホコリタケ(Vascellum curtisii)
キコガサダケ(Conocybe lactea)など
- 発生部位葉鞘、葉身
- 発病適温20~35℃(キノコ菌の種類によって異なる)
- 発生動向
すべての草種のターフに発生する。病原菌のきのこ類は、土中に“シロ”を形成して芝草の根圏に繁殖している。パッチはシロの形状にしたがって発生するので、病原キノコの種類によって特徴がある。コムラサキシメジでは数m~数10mの長さの扇状、シバフタケでは直径1~数mの円形、ホコリタケでは直径数10㎝の小型の円形から数㎡にわたる波状のものなどとなる。日本芝ターフではコムラサキシメジ、シバフタケ、ホコリタケ類が主要な病原菌である。ベントグリーンではホコリタケ類による被害が問題となっている。
- 初発のでかたと被害
濃緑色のリングが発生する。リング部分に子実体(キノコ)が形成されることが多い。子実体のみが発生することもある。
- 多発時の被害
土壌が湿潤なときには濃緑色のリングと子実体が形成され、美観を損なうだけである。しかし、土壌がいったん乾燥すると、リング部分に水が浸透しにくくなり、水分不足のため芝草が枯死する。
- 診断のポイント
濃緑色のリングまたは子実体が形成されるのでわかる。
- 丸和バイオケミカル(株)の取扱薬剤
セルカディスフロアブル、丸和レキシコン
グリーンに発生したホコリタケ
ホコリタケ
フェアウェイに発生したシバフタケ
シバフタケ
ラフに発生したコムラサキシメジ
コムラサキシメジ
ティーグラウンドに発生した濃緑色のリング
フェアウェイに発生した濃緑色のリング
リング部分が黄色を呈している
リング部分が褐変し始めている
リング部分が褐変し始めている
乾燥により褐変したリング
乾燥により褐変したリング
降雨が少ないと冬期にも褐変症状が発生する
薬剤を散布すると子実体の発生が抑えられる(左:薬剤処理区、右:無処理区)
リング部分の土壌に生息する菌糸(左:シバフタケ、右:ホコリタケ)
文・写真:
丸和バイオケミカル株式会社 開発本部 顧問
農学博士田中明美(たなかあけみ)
1963年生まれ
1985年に香川大学農学部を卒業後、香川大学大学院農学研究科、愛媛大学大学院連合農学研究科に進み、1993年2月に博士(農学)取得。
1993年4月より、香川大学名誉教授 谷利一博士のもとで緑地科学研究会 主任研究員として芝草病害に関する研究・調査に従事する。谷博士の逝去後は(有)緑地科学研究会を設立し、2018年5月まで代表取締役として活動した。
2018年6月より丸和バイオケミカル(株)開発本部 技術顧問として、芝草病害に関する研究および芝草殺菌剤の開発に関わっている。