病原菌:Sclerotinia homoeocarpa(Clarireedia jacksonii,C. monteithiana)
スクレロチニア・ホメオカーパ(クラリリーディア・ジャクソニー、クラリリーディア・モンテイチアーナ)
- 発生部位葉身
- 発病適温20~30℃
- 発生動向
すべての草種のターフに発生する病害である。最も問題となるのはベントグリーンでの発生であるが、日本芝のティグラウンド、フェアウェイやラフでの発生が増加している。
ベントグリーンでは4月下旬に散発的に発生し始め、6月中旬から7月上旬にはグリーン全面に激発するようになる。盛夏にはいったん病勢が衰える。その後9月中旬に再発し、10月下旬まで発生し続ける。日本芝ターフでは6月頃よりパッチが目立つようになり、10月頃まで発生し続ける。
- 初発のでかたと被害
単発のパッチは1ドルコイン大で、これが病名の由来である。パッチは麦わら色を呈し、パッチ部分と健全芝の境界が明瞭であるのが特徴である。直径2~3㎝のパッチでは内部、周縁部とも均質な麦わら色を呈するが、これ以上の大きさになるとパッチ周縁部が褐色を呈する。
- 多発時の被害
パッチが融合して不定形となる。放置すると罹病芝が枯死し、パッチ部分が裸地化する。他の病害に比べるとパッチの進展速度が遅く、大型パッチを目にすることは少ない。罹病葉上に菌糸が形成されるため、モアーで伝播して直線的に発生することもある。
- 診断のポイント
罹病葉上に紋枯様の病斑が形成されている。また、露の降りている早朝にパッチ部分に菌糸が張っているのが観察される。パッチ部分のソッドを抜き取ってポリ袋中に入れておくと、1~3日後に罹病葉上に白色、綿雲状の菌糸塊が形成される。
- 丸和バイオケミカル(株)の取扱薬剤
エメラルドDG、セルカディスフロアブル、タフキュアー水和剤、パッチコロン水和剤、パッチバスター、プルーデンス水和剤、ボンジョルノ乳剤、丸和レキシコン
発生初期のパッチ
パッチが多発し、融合している
活動中のパッチは外周部が濃褐色を呈する
病勢が進展すると芽数が減少し、裸地化する
コウライシバフェアウェイに発生したパッチ
ノシバラフに発生したパッチ
早朝に観察するとパッチ上に菌糸形成がみられることがある
罹病葉上の紋枯様病斑
文・写真:
丸和バイオケミカル株式会社 開発本部 顧問
農学博士田中明美(たなかあけみ)
1963年生まれ
1985年に香川大学農学部を卒業後、香川大学大学院農学研究科、愛媛大学大学院連合農学研究科に進み、1993年2月に博士(農学)取得。
1993年4月より、香川大学名誉教授 谷利一博士のもとで緑地科学研究会 主任研究員として芝草病害に関する研究・調査に従事する。谷博士の逝去後は(有)緑地科学研究会を設立し、2018年5月まで代表取締役として活動した。
2018年6月より丸和バイオケミカル(株)開発本部 技術顧問として、芝草病害に関する研究および芝草殺菌剤の開発に関わっている。