有機JASマーク

「有機JAS」と「農薬」について

2023.05.29

有機JASとは

当社の農薬相談窓口に「この農薬は有機JASで使用できるか」との質問が時々寄せられます。有機JASは正確には「有機農産物のJAS規格」のことであり、背景には1999年に改訂されたJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)で「有機農産物」の「規格」が法的に明確にされたことによります。罰則も付与されていることもあり、有機農産物の栽培に携わる関係者は「この資材は有機農産物のJAS規格に適合しているか」について慎重に確認をされています。

「有機農産物のJAS規格」の目的

「有機農産物のJAS規格」(第2条)では目的を「農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産すること。」と定めており、農薬や化学肥料の使用が制限されています。

ただ、病害虫の防除において「耕種的防除」「物理的防除」「生物的防除」に加え「緊急時の農薬の使用」が認められており、「有機農産物の日本農林規格」(令和4年9月22日農林水産省告示第1473号)に記載されている「別表2」において農薬の分類と指定資材が定められており、このリストに記載されている農薬のみ使用できます。(P8 参照)

*有機農産物の日本農林規格:https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-266.pdf

なお、2002年の農薬取締法の改正で「特定防除資材」(特定農薬)に指定された「重曹」「食酢」「地域の天敵」も「別表2」に追加されています。ただ、「特定防除資材」が自動的に「有機農産物のJAS規格」で使用可能とはならず、後述する「コーデックスガイドライン」の資材基準により評価し、「有機農産物のJAS規格」への追加の可否が判断されることになります。

ちなみに上記の目的に「土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる」とあることから「水耕栽培」、「ロックウール栽培」、「れき耕栽培」による生産物には有機表示ができないとされています。(水のみを利用し種子の生産力を発揮させる場合は「有機農産物のJAS規格」の対象)

 

JAS法と有機農産物

JAS法では20229月現在、89の規格があり有機に関しては「5規格」(有機農産物・有機加工食品・有機畜産物・有機飼料・有機藻類)が定められておりJASマークが制定されております。

有機JASマーク

《農林水産省 有機食品の検査認証制度より抜粋》 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html

この「有機JASマーク」は農林水産大臣が登録した登録認証機関から認証を受けた事業者がJAS法に適合することを証するマーク(JASマーク)を農産物や広告で使用できます。

上記の制度はコーデックス委員会*で1999年に採択された「有機生産食品の生産、加工、表示及び販売に係るガイドライン」(コーデックスガイドライン)に準拠しています。この為、日本で有機農産物の栽培で使用する資材を追加する場合(規格の改正/日本においては概ね5年毎に見直し)は、事前に海外の関係国に知らせる必要があり、関係国から質問があった場合は説明に耐えうる理由が必要となります。

*コーデックス委員会:国際連合食料機関と世界保健機構が1963年に設立した政府間組織

「食の安全」は全ての人にとって重要で、「農薬」では農薬取締法で定められている安全性に関する様々な試験を経て登録がなされています。一方、「有機農産物のJAS規格」では「農薬の安全性」とはことなる概念で目的や有機農産物の栽培方法を定めており、「食の安全」において同一基準で評価・比較は難しいと思います。ただ、農林水産省が掲げる「みどりの食料システム戦略」において「有機農産物のJAS規格」は一つの指標でもあり、当社は「有機農産物のJAS規格」に適合する資材の開発にも取り組んでいきます。

国際化を見据えたJASの戦略的な制定・活用について

~令和2年2月 JAS制度について/FAMIC 規格検査部商品調査課資料より抜粋~
 http://www.famic.go.jp/syokuhin/jas/_doc/seido.pdf

従来、「有機農産物のJAS規格」を含む「JAS規格」は、市場に出回る食品・農林水産品の品質を一定の範囲に揃える「平準化」を目的とする制度であったのに対し、これからの「JAS規格」は、食品・農林水産分野の競争力の強化に向け、事業者や産地の創意工夫を活かして多様な価値・特色を戦略的に「見える化」し「差別化」にも活用し易い枠組みへと戦略的な転換を図ることが掲げられ、これを足掛かりとする国際化を推進することも大きな目標となっています。


*本コラムは2023年2月末時点の情報や知見に基づいて作成しています。

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